一般社団法人アールイー
辻野 貴士さん
TAKASHII TSUJINO
「人、こと、地域」をつなぐハブ。
島原半島をより魅力ある地域として、
次の世代につなぎたい。
編集部員Dがワーケーションで訪れた「コワーキングスペースH.U.B雲仙」。そこでお会いした一般社団法人アールイーの設立メンバー・辻野さんに、施設運営に込めた想い、地域や次世代への想いをうかがいました。
人を惹きつける魅力をもった島原半島を
持続可能な地域にしていきたい。
私たちアールイーは、「H.U.B島原」「H.U.B雲仙」「H.U.B中堀」という3つのコワーキングスペースの運営を中核に、観光地で提供する多言語観光ガイドシステムやVRコンテンツの企画制作などを行っています。設立メンバーは、私を含め3人。全員が一度は県外に出て、経験を積み、島原に戻ってきました。
多くの地域に言えることですが、住民の減少や空き物件の増加など、島原半島でもさまざまな問題や課題を抱えています。そのような状況にある中で、持続可能な地域として次の世代につなぎたい。そのために今、自分たちの経験や技能を生かしてできることは何か。そうした想いから、活動のベースとなる法人格をもつ団体を設立しました。
①H.U.B雲仙は、電動のレンタルサイクルも利用可。次回の滞在では、辻野さんもおすすめの仁田峠のサイクリングルートを巡ってみたい。
②辻野さん自らドローンで撮影された雲仙の絶景。
③H.U.B雲仙の快適なワークスペース。
集まる人の「シェア」を支え、
「ハブ」となるワーク&コミュニティスペースを。
高齢化や人口の減少など、社会全体が縮小する方向にあると感じますが、業種の枠を超えて地域の企業と企業がつながり、お互いに得意とするものを持ち寄って「シェア」していけば、外に向けて打って出られる新しい「こと」を生み出していけるかもしれません。シェアリングは縮小する社会を生き残っていく、一つの方法ではないか。そのために必要なのは、人と人、企業と企業をつなげる「ハブ」となる場所――。そうした考えから、商店街などの空き物件を、さまざまな人が共有し、交流していけるスペースとして活用していくことを考えました。
最初は、2019年に市内の商店街に「H.U.B島原」を開設。続いて、雲仙のおしどり池の畔に宿泊施設を完備した「H.U.B雲仙」、2022年には中堀地区の商店街に「H.U.B中堀」を開設しています。元々はリモートワークやテレワークなど、多様化する働き方の受け皿としての機能をメインに考えていましたが、最近は「人と人」「人とこと」をつなげていくことも意識し、地域の情報を発信していくことにも力を入れています。
施設の開設直後にコロナ禍という苦労もありましたが、好きなことがベースだからこそ乗り越えていけるのだと思います。
H.U.Bは人と地域をつなぐメディア。
島原半島の魅力と可能性を伝えていきたい。
私たちが運営するH.U.Bは「箱」であり、「メディア」です。人が集まる場所には情報が集まり、その情報を発信することでさらに多くの人が集まります。個々でできることは少なくても、私たちが持つ箱を起点に人や地域の企業がつながっていけば、きっと今までにない新しいことができます。また、島原半島やH.U.Bの情報を全国に発信していくことで、地方でもこんな働き方、生き方ができるんだということを知ってもらいたい気持ちもあります。
海と山と街がコンパクトにまとまった島原半島は、水平移動ではなく垂直移動していくことで環境が大きく変化する、魅力に満ちた地域です。その価値をより多くの人に伝えるため、今以上に情報の発信力を高めていきたいと考えています。すでに各地のH.U.Bは想像を超えるかたちで地域に浸透し、少しずつ人が集まり始めています。身体を巡る血液のように常に多くの人が島原半島を訪れてくれれば、この地域は持続し、新しい「こと」が生まれる場所になる。私たちのH.U.Bがその一助になれるよう活動を深掘りし、この地域を魅力あるものにして次の世代につなげていきたいと思います。
- 2023年4月取材・撮影
- 取材: Nの広報さん編集部
- Photo: JUN KAMASAKI 〈 STUDIO346 〉