vol.002

カフェと宿 ROUTE

岸川 信吾さん

SHINGO KISHIKAWA

カフェと宿と自転車。
観光と暮らしが交わる場所から、
旅行者とまちの人々をつなげていきたい。

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長崎・聖フィリッポ教会近くの坂道に建つ「カフェと宿 ROUTE」。
「エンジョイする大人がたくさんいるまちでありたい」と 笑顔で語る店主の岸川さん。宿泊ゲスト、スタッフ、仕事仲間と楽しそうに話すその姿は、まさに、それを体現しているように見えました。

宿泊だけでなく、地元の人とも
つながれるカフェとお宿へ。

大学進学で長崎を出た私は、中国留学やバックパッカーとしてアジアや中南米を旅し、海外に身を置いたことで、長崎や日本のことを客観的に見るようになりました。その後、いつか長崎で事業をという想いも持ちながら、海運会社や貿易物流会社に勤務。東京でホステルの開業に携わるなどの経験をもとに、2008年~2020年まで眼鏡橋の近くで「インターナショナルホステル あかり」を経営していました。あかりは、宿泊に特化した施設だったので、お客さまは県外や海外の方が中心。地元の方は宿泊することはないため、地元の方と接点を持つことが難しいということに気がつきました。これらの経験から2013年、長崎駅近くに開業した「カフェと宿 ROUTE」は、地元の人ともつながることができる場所。宿泊ゲストと地元の方に間口を開き、「カフェ」と「宿」を複合したお店として運営しています。

撮影中も楽しそうにリクエストに応えてくださるスタッフの皆さん。雰囲気の良さが伝わってきました。

ROUTEは、スタッフ、ゲスト、
関わるすべての人によってつくられる場所。

「ROUTE」の宿泊施設は、「CABIN」という寝台列車のような5部屋と、フロアを貸し切って、家族やグループで最大6人まで宿泊できる、リビングと寝室を分けた1DKの1部屋(R-Residence)を設けています。実は「CABIN」は自身のバックパッカーの経験からできたお部屋です。私はドミトリー(相部屋)が得意ではなく、個室に泊まってばかりいました。でも、急に人恋しく誰かと話したくなる時もある。だからプライベートとドミトリーの中間的なセミプライベートの空間ができたらいいなと思ったんです。扉は、半透明のアコーディオン。外から「あっ、中に誰かおるな!」とうっすら気配がわかるくらいの設定。でも、自分のスペースに施錠もでき、交流もできる。そんな空間です。
カフェは、朝は宿泊ゲストの朝食の場。私たち夫婦は旅先での朝食がたまらなく好きなこともあり、美味しい朝食のあるB&Bのような場所にしたかったんです。ゲストさんとの朝の会話の時間は、朗らかで健やかで、私たちのいい時間となっています。また、不定期ではありますが、地元の方や観光の方に向けたカフェ営業や、ポップアップのイベントなども開催しています。 お店は運営スタッフ、ゲスト、関わる人みんなでつくっているものだと思っているので、良い雰囲気が集まる健やかな場所でありたいですね。

編集部員も電動自転車を体験(約6時間)。車より小回りがきき、徒歩より楽で広範囲へ移動できる電動自転車は、観光はもちろん、普段の移動にも心強い味方になりそう。

観光にも生活にもフィットするeBike。
坂のある暮らしに新しい価値を。

「ROUTE」では、レンタサイクルも行っています。これは長年、ライフワーク的に取り組んでいる事業です。長崎市内の歴史的な観光スポットの多くは平地の川に沿って点在しているので、自由に移動できる自転車なら、観光エリアはもちろん、暮らしのエリアまで感じることもできる。観光と自転車は、とても相性が良いです。実際、観光客の方には、抵抗なく利用いただいています。 一方、坂の多い長崎では、もともと生活の中に自転車の活用は少なく、「自転車の市民権」が得られていないのが現状です。長崎は国際色豊かなイメージがあると思うのですが、新しく入ってくるものには受け入れと拒絶の2つの反応がある気がします。それを長い歴史の中で繰り返しながら、個性を育んできたんじゃないかなと。それは決してネガティブなものではなく、まちのおもしろさだと思うんです。私がこの事業に力を入れているのは、そんな長崎へのアンチテーゼ(笑)。でも、これは対立ではありません。既成概念にとらわれず、観光と暮らしが相互に寛容し合う関係でありたい。観光だけでなく、生活にもフィットし、坂のある暮らしにeBike(電動アシスト自転車)という新しい価値を生み出したいという願いであり、提案でもあります。

聖フィリッポ教会を背景に。屋上から見えるこの景色も、この場所を選んだ理由の一つだそう。

エンジョイする大人たちがたくさんいるまち。
子どもたちや若い方に、そんな背中を見せたい。

レンタサイクル事業に加え、プロガイドと一緒に長崎の歴史や暮らしを巡る「ガイドツアー」などにも力を入れています。長崎の表層だけでなく、もっと多面的に深く踏み込んだ観光を楽しんでもらうことで、長崎のまちや人の魅力にも触れてもらえたらうれしいと思っています。
また、イラストレーターさんや多くの方に協力いただきながら、『リンリンテクテクマップ』を制作・発行しています。情報は観光エリアから暮らしのエリアまで広がり、楽しみながら改訂を重ねています。 旅行者にとって宿やお店のスタッフなど、最初に接する人は“第一村人”。そこでどんな印象や情報を得るかで旅の方向性やゴールまで変わることを考えると、サッカーでいうボランチ。パスを出す私たちは責任重大です。 例えば、旅行中、限られた3食のうちの1食は、美味しいちゃんぽんを仕留めてもらいたい! ゲストの方にも「ここのお店に行ってみて」と自信をもって言いたんです。だからこそ、「まちがひとつの旅館」になってお迎えする。そんな気持ちでマップを作っています。
ここ数年は行政や観光などの会議などにも積極的に参加していて、行政と融和することで、いろんな流れや結果が生まれてきていると感じます。よく思うのですが、このまちの未来のためにも、エンジョイしている大人がたくさんいるまちであり続けたい。大人が充実してエンジョイすることを純粋に突き詰めれば、子どもたちや若い方にも波動が伝わり、まちにも良い波動が連鎖していくと思います。
今後は今の事業をブラッシュアップしながら発展させ、誰かとコラボをしていきたいですね。アイデアを相乗すると、自分の頭の中だけよりもきっと良いものができるはずなので、協力・協働していくことにチャレンジしていきたいと思っています。

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運営サービス一覧/カフェと宿 ROUTE

  • HOSTEL

    寝台列車のような5つのCABINは、プライバシーを守りながら他のゲストとも交流もできるセミプライベート空間。1フロア貸切で利用できるR-Residenceは、家族や友人など最大6人まで宿泊可能。

    公式サイト
  • CAFE

    朝は宿泊ゲストの朝食の場として、不定期営業で観光客や地元の方に。具材をチョイスして味わえるグラハムパンの手作りサンドイッチとマフィンが人気。営業日はTwitterInstagramで公開中。

    公式サイト
  • BICYCLE

    シティバイク、クロスバイクのほか、坂道もラクに上れるeBike(電動アシスト自転車)を用意。オリジナルの『リンリンテクテクマップ』を見ながら散策すると、今までにない長崎観光ができるかも。

    公式サイト

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